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中国におけるメールサービスの運用技術とその実状

ビジネスの根幹であるメールの導入

前回までの連載で、すでに中国にオフィスを構えている、もしくはこれから中国に進出されようとしている日本企業のシステム担当者の方に向けて、ネットワークインフラ構築の「ツボ」をお送りしてきた。一言で言えば、「上海(中国)では日本(ネットワーク先進国)の常識が全く通用しない」ということで、何がどう通用しないのか、その問題点をふまえた上で、われわれが取り得る対策はどのようなものがあるか、というのが大きなテーマだ。

そこで今回は、ビジネスの根幹をなす最重要インフラである「メールサービス」について検証する。大事な話であるため、極めて初歩的な説明も入ることをご容赦いただきたい。仕組みの理解、問題点の指摘とケーススタディー、問題解決方法の提案、という流れでお伝えしたいと思う。

さて、日本国内での送受信では、プロバイダーを問わず、送ったメールが届かない、届かなかったことすらわからない、どこかへ消えてしまった、というようなことは、90年代のネットワーク黎明期ならいざ知らず、通常まずありえない。 今日もはやメールという通信手段は、企業の経済活動を支えていると言っても過言ではない。そして中国は現在、世界の経済の中心にいる。 ところが日中間では、おもに中国側のネットワーク管理・運用の質が低い(ネットワーク機材の質は低くない)という問題により、「メールが届かない」という事態が頻繁に起こりうるのだ。パソコンから送られたメールは、DNSでIPアドレスの問い合わせを相手方DNSに行い、名前解決したのち、SMTPサーバを介して相手方に送られる。(図①参照)受信側では通常さらに、送信メールに対するスパムチェックやウイルスチェックも行われる。

日中間メール

「日中間でメールが届かない」問題は、日中間のネットワークインフラそのものに問題がある場合と、機器の設定がおかしいなどの、ネットワーク管理者の質が低い(ヒューマンエラー)場合の2つに大別される。

まずインフラの問題は大きく4つある。

ひとつめは、日本側ISPの海底ケーブルの帯域の問題で、通信時のパケット損失率が恒常的に高く、特に大容量のメールデータが届かない(データを復元できない)ケースがが挙げられる(図①A参照)。 
弊社では、上海市内200箇所以上にネットワーク監視装置を設置しているが、実名を挙げてしまうと、OCN(NTT)の回線は、パケット損失率が10%を超える監視地点が、恒常的に多く見られる(図②参照)。

ネットワーク監視装置


理由は単純である。OCNの利用者が急増していにもかかわらず、中国側ISP(電信)との日中間のピアリング(ISP同士が相互にネットワークを接続し、互いにトラフィックを交換し合うこと)で充分なトラフィックの域帯を確保しきれていないことに原因がある。これについては中国側の政策も関ってくるためOCNとしては対応が難しい。

二つめは、日本→アメリカ→中国など、データ通信経路が「遠回りさせられる」ことによって応答速度が落ち、リトライを重ねても結局送れない、などの問題だ。この「遠回り」の問題で、こちらも実名を挙げると、C&WJapanなどの外資系の回線は、日本(東京)→中国(上海)に直結する回線を持っていない。航空機にたとえれば直行便がないわけだから、不便なのも無理はない。

三つめは、中国側のインフラの質の問題だ。契約している中国側ホスティングサービスの容量制限の問題。高価なネットワーク回線を安価に提供しているので、一人の客にあまり大きなパケット通信量をあてることができないわけだ。もちろん容量制限が大きい会社を選ぶにこしたことはない。詳しくは別表の、中国向けプロバイダのホスティングサービス比較表を参照いただきたい。

 
最悪なのは、「送ったメールが届かないことすらわからない」ケースで、これは筆者の推測だが、上記の問題(高価なネットワーク回線を安価に提供している)に付随して、パケットの通信量を節約するために、不達のお知らせメールを省くようなことを平気で行う。送ったはずのメールが届いていないとなると、「メールが届いているかどうかを電話で確認する」ような無駄な作業が必要となるわけで、この場合、言うでもなく業務に支障をきたすことになる。中国ISP各社のFTTB(Fiber to the building=光回線)の質の問題もある。中国電信(チャイナテレコム)、中国網通(チャイナネットコム=通称アミツー)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国鉄通(チャイナレールコム)の国営4社があるが、電信と網通以外の2社はやめた方がよいと断言できるほど、頻繁に問題が発生する。

筆者のおすすめは網通だ。AGC(アジア・グローバル・クロッシング)という海底ケーブル会社を数年前に買収しており、ピアリング(二国間のデータのやりとり)契約の増加などにも柔軟な対応で、光回線のサービスを積極的にすすめて行こうという姿勢がうかがえる。網通がつながりにくい時、伝送経路を次善の電信に切り替えるという対応ができればベストだ。

四つめは、中国の国情によるものが挙げられる。すべての通信事業者が国営企業またはその傘下にあり、利用者の権利よりも、常に国益が優先されるため、海外からの通信に対して規制(アクセス制限)が頻繁に行われる。そのため予告なく海外からのメールが届かない事態が起きる。

以上、日中間でメールのトラブルが起きると、「よくわからない。中国だから仕方がない」で片付けられがちだが、決してそうではない(政策によるアクセス制限だけは“中国だから仕方がない”部分が多々あるが)。ネットワーク管理の運用次第で、これらの問題はクリアできるものも多いということがおわかりいただけたと思う。なんといってもビジネスでやりとりするメールが1通でも欠けるということは甚大な経済的損失であり、あってはならないことだと筆者(弊社)は考える。エンドユーザーがそのつど特定の会社の海底ケーブルを選ぶようなことはできないが、運用面などがしっかりした会社を選ぶことはできる。


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※対中ビジネス支援情報誌 月刊「大上海圏 日企情報PRESS」(発行 大陸共同メディア株式会社)に連載された「実践・上海ブロードバンド事情」より。Web用に再編集した。


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